超高齢化社会到来で供給機運が高まる「高齢者向け住宅」

日本は超高齢化社会に突入し、「人生100年時代」になったと言われています。
住宅事業者にとって悩ましいのは、高齢化と同時に少子化も進行しており、子育て世帯を中心とした戸建て住宅やアパートの市場は調整期に入っていることです。

こうした状況の中で、ハウスビルダー様にとっての新たな事業領域・収益源になると見られるのが「高齢者向け住宅」です。
有料老人ホームやグループホームなどいくつかの種類がありますが、今回は木造住宅の建築ノウハウを生かしやすい「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」についてフォーカスしていきます。

高齢者の暮らしに配慮した「サ高住」

最初に、高齢化の状況について確認しておきましょう。
日本では2007年に「超高齢化社会」(65歳以上の高齢者が総人口に占める割合が21%以上になることが定義)に突入。
内閣府の高齢社会白書では2020年10月1日時点の高齢化率は28.8%としており、2025年に30.0%、2065年には38.4%に上昇するとされています。高齢者の単身・夫婦世帯も増加傾向にあります。

しかし、バリアフリーや温熱環境などに配慮がない従来の戸建て住宅やアパート、マンションでは安心・安全・健康に暮らし続けることが難しいのが実情です。中でも賃貸住宅では、オーナーが高齢者世帯の入居に消極的なケースも見られます。

そこで、国は2011年に「高齢者住まい法」を改正し、国土交通省は一定のサービスを提供する高齢者住宅の整備を目標に、「サービス付き高齢者向け住宅登録制度」をスタートしました。
加えて、2025年度までに100万戸のサ高住を供給する計画を発表。「サ高住整備事業」(スマートウェルネス住宅等推進事業の一環)の補助金交付などで後押ししており、2021年までの供給実績は8017棟、27万2870戸となっています。

サ高住の登録基準は下記の通りです。

・各住戸の床面積が原則25㎡以上

・各住戸に台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること

・バリアフリー構造であること

・少なくとも状況把握サービス・生活相談サービスを提供すること

入居者となる高齢者は、「アクティブシニア」と呼ばれる比較的心身が健康で介護度が低レベルの人から、ある程度のケアが求められる中レベルの人であることが一般的です。ですので、有料老人ホームのような高度な仕様・設備は必要とされません。​​

サ高住のビジネスモデルについてもご紹介しておきます。
基本的なモデルは従来のアパートと同様で、土地オーナーの資産活用策として、ハウスビルダー様がオーナーと建築請負契約を結び建物を建設します。
異なるのは入居者です。サ高住の場合はサービス運営を行う介護事業者がオーナーとの賃貸契約期間での一括借り上げを行い、入居者の募集やサービス提供を行う事が一般的です。
ですから、できた建物のサブリースの手法を生かせる点で、ハウスビルダー様のビジネスモデルと親和性が高いと言えるわけです。


親和性の高さは、木造住宅での建築に適している点でも言えることです。サ高住はあくまでアパートの延長ですので、有料老人ホームなどのような大規模な建物である必要がないからです。

サ高住供給の特徴

アパートとサ高住では異なる点もあります。

前者は駅近などの立地に大きく左右されますが、後者はその影響を受けにくいという特徴があります。高齢者住宅ですから、繁華街に近いエリアより閑静な田園地帯などの方が好まれるためです。

また、市場の飽和性を見てもアパートは既に厳しい状況ですが、サ高住は全体的に見ると未だに余裕があります。
こうしたことから、オーナーが利回りを確保する点でサ高住は比較的優位性が高いというわけです。

サ高住のメリット

オーナー

・利回りを確保しやすい

国や都道府県から建築費の補助金が出る

ハウスビルダー様

・木造住宅建築のノウハウを活用できる

アパート供給のノウハウを活用できる

但し、サ高住に求められる介護サービスの質は地域それぞれです。長期安定経営はもちろん、地域の介護・医療負担の軽減に貢献するといったオーナーメリットを実現するためには、高い質のサービスを提供することが求められます。​​

そこで大切になるのが、ビジネスパートナーとなる介護事業者の存在です。
地域や入居者ニーズによっては、一定レベルの介護・医療サービスの提供が必要になることもあることから、信頼と実績がある事業者と連携して、事業を進めることが大切です

質の高いサービスの提供には、介護事業者にとって使い勝手の良い間取りや動線を確保することも重要となります。

この他、サ高住整備事業の補助金を受けるためには、専門的な知識と経験が求められます。

サ高住供給へのハードル

・介護事業者の選定と連携が重要

法規制・補助金取得の条件が厳しい

サービス内容に合わせた間取りや動線が必要

野原住環境(株)では、これまでに数多くのサ高住供給プロジェクトに関わった実績があり、その中で介護事業者とのネットワークも構築しています。
建築コスト低減というオーナー様のご意向も伺いながら、プロジェクトに適した商材のご提供と助言を行うコンサルティングも展開しています。​​「サ高住供給に興味があるがハードルが高いと感じる」というハウスビルダー様も多いと考えられます。
しかし、少子高齢化はますます進行し、従来のビジネスモデルだけでは成長が見こみがたい状況になるのは間違いありません。
一度当社にご相談いただければと存じます。